「大変なこと? 佐々さん、それは何ですか」
「今夜の中に火星のボート群が、かなりたくさん、このへん一帯に着陸するだろうよ。火星人はいよいよその数を増して来るんだ」
「えっ、そうですか。それはどうも話が、早すぎますね。さっき私は、ぜひこの山中一帯をゆずってくれと、丸木に責められたんです。もちろん私が、うんと言わないので、丸木はおこっていました。その時の丸木は、まさか佐々さんじゃなかったでしょうね」
「違うよ違うよ。あれは本物の丸木だ。わしはかげのところから、そっと隙見をしていて、知っているよ」
 と、佐々はにが笑いをして、
「そこで先生。わしは、いよいよ思いきったことをやるつもりだよ」
 怪人丸木に変装した佐々刑事が、すこぶる、はりきっているのは、たのもしいことであった。とりこになっている新田先生も、佐々の話を聞いていると、自然に勇気が出て来るような気がした。
「ねえ、佐々さん、私は一つ、大変心配していることがあるんだが……」
「心配ごとって、それは何だね。早く言いたまえ」
「それは外でもない、千二少年の行方のことなんですがね」
「ああ、千二のことか」

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